会長就任にあたってのご挨拶

日本子ども家庭福祉学会 会長 上鹿渡 和宏
本学会は、国連の子どもの権利条約を基調に、子どもと親のウェルビーイングを促進する子ども家庭福祉を目指して1999年に設立されました。その後、子どもが育つ環境や人との関係性は大きく変わり、それに合わせるように子どもたちも変化し続けています。ユニセフが2020年に発表した先進国における子どもの幸福度調査では、日本の子どもの身体的健康は1位、精神的幸福度は37位(38か国中)と報告されました。子ども家庭福祉に限らず、子どもの幸せを願い、実現しようとする大人は、子どものために様々な取り組みを続けてきました。その成果が子どもの身体的健康1位に現れていると思います。一方で、子どもの精神的幸福度37位は、大人が「子どものため」と思っていたことが、子どもからするとズレており「子どもとともに」なかったことの現れと言えるのではないでしょうか。大人がこのズレに気づき、子どもにとって何が起きているのか理解できれば、これからの子ども家庭福祉を子どもとともにつくることができると思います。
2022年にこども基本法が成立し、2023年にはこどもまんなか社会の実現に向けてこども家庭庁が動き始めました。日本の子ども家庭福祉は、これまで「子どものため」に取り組んできたことを「子どもとともに」へ確実につなげる必要があります。その実現に向けて、2024年に創設されたこども家庭ソーシャルワーカーの活躍も大いに期待されます。
私は本学会会長としての責務を果たすにあたり、子ども自身が「まんなかにいる」と思える社会、子どものウェルビーイングの実現を第一に考えます。子どものウェルビーイング実現に向けて会員のみなさまが本学会に期待されること、また、子どもとその養育者や支援者が期待することにも学会として応える必要があると思います。本学会設立趣意書にも「子ども家庭福祉制度のあり方を研究、議論する場」だけでなく「子どもや親の意見を社会的に代弁する場」を設定することが示されています。子ども家庭福祉の大きな転換期にあって、今まさに必要とされていることです。2024年の第25回大会以降、高校生や大学生の研究・実践発表の場が設定され多くの参加があります。大会参加者にとって、それぞれの考えや実践を知ることで、子どもとともにあることを考える貴重な機会となっています。
さらに、設立趣意書には「ソーシャルワーク、保育、子どもの権利擁護、精神保健等の実践にかかわる方々、研究者、大学院学生、学生らによって構成することをめざしています」とあります。子どもと親のウェルビーイング実現には、福祉だけでなく、子どもや親を助ける他分野の研究者や実践者との協働も必要です。子どものウェルビーイングを実現しようとする全ての関係者と、当事者である子ども・若者とともに、これからの子ども家庭福祉をつくることを促すことが本学会の役割だと考えます。
本学会は2029年に30周年を迎えますが、その先100年後を見据えて今を生きる子どもと将来を生きる子どもの幸せを考えることも大切です。幸せな子ども期を生きた人が大人になり、次の子どもに幸せな子ども期を提供する循環によって、100年後の子どもの幸せも実現できると思います。かつてない速さで大きな変化が生じ続けている社会の中で、100年間変わらず子どもに必要なことは何か、私たちは考え、それをなくさないよう、わからなくなってしまわないよう、大切に守り、次につなげていかなければなりません。
これまで本学会の発展を支えてくださっているみなさまの思いと、これからを担うみなさまの思いを合わせて、子どもや家族とともにある「子ども家庭福祉学会」として30周年を迎えられるよう、私の役割と責任を精一杯果たしてまいります。
どうぞよろしくお願いいたします。
