会長挨拶

就任にあたってのごあいさつ

日本子ども家庭福祉学会 会長  相澤 仁

 2020年度より、会長の任を務めさせていただくことになりました大分大学の相澤 仁でございます。重要な役目を仰せつかりまして、その責任の重さに改めて身の締まる思いです。
 私は、長い間、児童自立支援施設に勤務し、子どもたちと寝食をともにする生活をさせてもらいました。そこでの実践研究などにおいて誰に最も多く指導を受けたかと言えば、子どもたちに他なりません。「一人の子どもを見捨てることはすべての子どもを見捨てることにつながる」ということなど、子どもたちから実践の場で学びました。また、「個性ある一人ひとりの子どもの『いのち(Life:生命・生活・人生)』のWell-beingを尊重しつつ、多様な存在価値を認め合いともに生きともに育つ」といった理念や、パートナーである子どもの視点からの研究や子どもの参画による研究の重要性を了知させてもらいました。
 本学会は昨年度設立20周年を迎えており、本学会が積み上げてきた学会活動を継承しながら、さらなる発展に向けて少しでも貢献できるよう、浅学非才の身ではございますが、会員の皆様のご支援ご協力を得ながら、理事、監事の方々と連携して取り組んで参りたいと思います。
 子ども家庭福祉分野においては、21世紀に入ってから、超少子高齢化の問題、子どもの貧困問題、子ども虐待の問題などが深刻化し、こうした問題などに対する制度施策の改革が次々と行われてきました。今も続いている状況です。また、最近では毎年のように発生する豪雨災害や新型コロナウィルス感染症(COVID-19)などにより、子どもや家庭については多大な影響を受け、先行きが見えない中での不安・ストレスや経済状況の悪化などを起因とする子ども虐待や子どもの貧困などの増加が危惧されています。
 このような制度施策の連続的な改革や未曾有の事態に対して、実践現場で対応できる効果的な実践方法やプログラムなどについての研究や人材育成などは追いついていません。
 また、国が推進している地域共生社会の実現を目指すには、子ども家庭福祉だけではなく、障害者福祉や高齢者福祉など他の分野とも連携して、地域住民の複合化・複雑化した支援ニーズに対応する家庭全体を対象にした包括的な支援体制の構築などを推進することが求められています。
 このような今日的課題についても視野に入れた子ども家庭福祉に関する調査研究活動などの活性化を図りつつ、パートナーである子どもや家庭のアドボカシーとして子ども家庭福祉の発展に寄与できる学会活動や、会員の成長発展の場となる学会活動を目指して努めて参りたいと思います。会員をはじめ関係者の皆様、どうぞよろしくお願い申し上げます。