設立趣意書

 子どもと親をめぐる問題は、多様な社会的・公的な努力にもかかわらず一層深刻になっています。1996年3月中央児童福祉審議会に基本問題部会が設置され、1.保育システム、2.児童自立支援システム、3.母子家庭施策の3点について検討が行われました。駅伝方式で社会的合意が形成でる部分の改正ということで中間報告に基づいた法案が作成され1997年には50年ぶりに児童福祉法が改正されました。だが、未だ多くの問題が残っており、さらなる法改正が期待されています。
 例えば、1989年に国連総会で採択された子どもの権利条約は、1994年に我が国でも批准・発効されました。多様な子どもの権利擁護サービスが少しずつ育ちつつありますが、現状は不十分です。児童福祉法の中に、子どもの権利擁護システムが明記されることが重要な課題です。社会福祉全体では、社会福祉基礎構造改革が進んでいます。
 さらに、子ども家庭福祉にかかわる新たなNPOが誕生しています。既存の法律に基づくサービス以外の自発的・積極的な諸サービス、活動、運動がより一層広がりつつあり、利用者へのサービスが多様化するとともに既存の制度や実践にも大きな刺激を与えることが期待されています。
 本学会は、これらの国内外の歴史、現状、動向をふまえつつ、国連子どもの権利条約を基調に子どもと親のウェルビーイング(個の尊重・自己実現)を促進するための子ども家庭福祉制度のあり方を研究、議論する場、子どもや親の意見を社会的に代弁する場を設定しようとするものです。
 特に、保護を必要とする子どもの福祉を中心とする領域での学会は皆無です。ソーシャルワーク、保育、子どもの権利擁護、精神保健等の実践にかかわる方々、研究者、大学院学生、学生らによって構成することをめざしています。また、学術大会でも、発表時間を多くとりディスカッションできる場を確保したいと考えています。
 活動は地域での月例研究会、学術大会、ニュースの発行などを企画しています。

1999年5月吉日

日本子ども家庭福祉学会設立準備委会
代表 高橋重宏(日本社会事業大学)
柏女霊峰(淑徳大学)
山縣文治(大阪市立大学)
事務局長 松原康雄(明治学院大学)