日本子ども家庭福祉学会 -Japan Society of Child and Family Welfare-

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リレー随想 ~会員および現場からの声 vol.15

リレー随想 ~会員および現場からの声 vol.15

都内子ども家庭支援センター専門相談員 齋藤 正恵  ずいぶんと昔のことだが、生...

都内子ども家庭支援センター専門相談員 齋藤 正恵

 ずいぶんと昔のことだが、生後5か月の長男を抱いてバスを待っていた時の心細い不安な気持ちをふと思い出すことがある。予防接種の日、バスはなかなかやってこなかった。「間に合わなかったらどうしよう」。転居して間もない土地で、子育て初心者の私は不安いっぱいでバスを待っていた。また、こんなことも思い出す。長男4歳、次男2歳、長女0歳のころ。トイレで長男のお尻を拭いていた時「かわいくないな」という思いがすっと心をよぎった。そんなことを考えてはいけないと、その思いをなかったことにした。思うようにいかない育児にイライラし、感情的に叱責して、自己嫌悪に陥ることもたびたびだった。「情けない、ダメだ、もっと勉強していい母親にならなくては」と育児書を読みあさり、子育て講座にも足を運び、ダメ母を脱却しようともがいていた。そんな私が今、子育てにまつわる相談を受けている。
 相談内容は様々だが、最近多いなと思うのは、「子どものことがかわいく思えない、憎らしいとさえ思ってしまう、そういうことってあるのですか?」というものや「いけないとわかっているのにかっとなって気が付くと叩いている、どうしたらやめられますか?」等の相談だ。また、ひろばで子育てエピソードを聞いていると、ちょっとしたことが不安だったり困っていたりする。今のお母さんたちは、さまざまなツールを使って多くの情報を得られるがゆえに、その情報がかえって過度の不安を創りだしていると感じることもある。「なんてことない不安はあって当然」「わが子でもかわいく思えない時があるのも異常なことではないよ」と今の私なら言える。
 状況によっては適切な支援や情報、解決策などの助言が必要である。緊急性があれば介入もありうる。そして、何かしてほしいのではなく、ただ話をきいてもらうだけで救われるときがあることも忘れてはならない。不安や大変さを話せたこと聞いてもらえたことで、気持ちが軽くなり、自ら進んでいく力が湧いてくることがある。それは、私自身の経験でもあり、相談の場面で出会った何人ものお母さんたちからも学んだ。お母さんたちが漏らす弱音やぐちはとても大切な声、その声に今日も耳を傾ける。

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