日本子ども家庭福祉学会 -Japan Society of Child and Family Welfare-

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リレー随想 ~会員および現場からの声 vol.14

リレー随想 ~会員および現場からの声 vol.14

立正大学 安達 映子  この夏,子育て支援センターでの養育者-実質的には全員母親...

立正大学 安達 映子

 この夏,子育て支援センターでの養育者-実質的には全員母親でしたが-とのグループワークで,2回にわたりナラティヴ・ワークにチャレンジする経験をさせていただきました。
 ナラティヴ・ワークとは,「私たちが人間として,時間とともに展開する特定の状況における個別の人間を理解し表現したいと思うとき,物語(narrative),すなわちストーリーを語ること(storytelling)へと自然に手が伸びる」「自分自身や他の人たちにストーリーを語ることで,私たちはゆっくりと,自分が何ものであるかを知るようになるだけでなく,自分自身になっていくのである」(「ナラティヴ・メディスン-物語能力が医療を変える」R.シャロン 医学書院 より)-と考えるナラティヴ・メディスンの手法を参考にして考えてみたプログラム。人生の意味に着目し,これに物語的手法で接近しようとするナラティヴ・アプローチと関心を共有しています。
 具体的には,8名の参加者と次のような作業に取り組みました。第1回目は,児童文学の名著「モモちゃん」シリーズの1冊「モモちゃんとアカネちゃん」の一部分を事前に読み,そこから自分と子どもをめぐるストーリーをA4で1枚(800字程度)に書き,これをグループの中で一人ひとり音読するというワーク。参加者は,これを聴き,必要があれば質問やコメントを返します。2回目は,伊藤比呂美の「意気込み」という詩で同様の作業を行いました。この進め方をご案内したときには,「長い文章なんて書けるかしら?」「詩を読んだことなんてないし...」と不安げな様子の皆さんでしたが,実際はまったくの杞憂。実にカラフルでオリジナルなストーリーが書かれ,そして読み上げられました。
 普段の語り合い中心としたグループではあまり発言もされず控えめな女性の堂々とした文章,元気で大胆な印象のお母さんの驚くほど繊細な視点。そんな新たな発見とともに,良質なテクストがそれぞれの経験の豊饒さを開くこと,ストーリーが喚起するストーリーのおもしろさと深遠さ...といったことを体感できた素敵なひと時であったように感じています。

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