日本子ども家庭福祉学会 -Japan Society of Child and Family Welfare-

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リレー随想 ~会員および現場からの声 vol.3

リレー随想 ~会員および現場からの声 vol.3

自主避難の子ども家庭をどう支えるか? 武蔵大学人文学部  武田信子  福島原発の...

自主避難の子ども家庭をどう支えるか?
武蔵大学人文学部  武田信子

 福島原発の放射線被曝の影響を恐れて、全国に散らばった家族が何万といる。今、日本で起きていることは「国内難民の大量発生と受け入れ問題」である。ある家庭は経済的事情で、ある家庭は意見の不一致で、ある家庭は離婚して、父や祖父母を福島に残し母子だけで疎開している場合も少なくない。育児休暇中だけ福島から離れているが、仕事の都合でまもなく福島に帰るという母子もいれば、重複障害児の通学のために福島に残るが、休日だけでも県外で過ごしたいとという家庭もある。それぞれの事情は異なるが、共通して言えるのは、福島の豊かな人間関係の残る地から急な転居や判断の相違から孤独に陥り、母子が困窮しているということである。新しい地に知人がいない母子は、できる限り福島出身者であることを知られないように、福島弁で話さなくてもいいように、周囲に迷惑をかけないように、周囲から非難されないように、狭いアパートで身をひそめるように暮らしている。身内からは「安全な福島をどうして捨てるの?」と言われ、転居先からは「税金を払わないのにどうして厚遇されるの?」と言われ、東北人の我慢強さと遠慮深さで静かにじっとしている。
この10カ月、子どもたちは友だちや従兄妹と離れ、家の中でどう過ごしてきたのだろう?健やかに発達しているだろうか?母たちは悲しみと無念さと経済的な不安と将来の不確定さを抱え、この冬、子どもたちにあたることなく乗り越えていけるのだろうか?
子育て支援の場に「引っ越してきました」と現れる母子に、元は自分たちも孤立した子育てをしていたNPOのスタッフたちが寄り添おうとしているが、被災三県以外には寄付金も物資も提供されにくく、善意だけではどこまでも支援を続けられない。それにしても、子育てひろばに現れる母子はまだ救いの手が差し伸べられるが、パソコンもなく、情報にアクセスできない母子も多数いる。
秋になって個人的に山形のNPOからの支援要請を受け、毎月うかがって対策を練っている。が、これは一つの県だけの問題ではなく、全国的な問題であろう。子ども家庭福祉の視点から、このような家庭にどのような支援ができるのだろうか?早急に、大胆かつきめ細やかな支援がいま必要とされている。

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